ワイドトレッドスペーサーってどのような目的で取り付ける物かご存知ですか?
ほとんどの方は「ツライチ」と呼ばれる、フェンダーとタイヤの張り出した面を同じライン上に合わせるドレスアップパーツとして認識している方が大半と思いますが、実はそれ以外の目的もあります。
それ以外とは何か?それは足回りのセッティングパーツであるという事です。
今回は愛車にワイドトレッドスペーサーを取り付けましたので、見た目の変化や走行性能に与える効果をメリットデメリット踏まえて紹介します。
ワイドトレッドスペーサーとは?
ワイドトレッドスペーサーとは車とホイールを固定する「ハブ」に取り付けるパーツです。ワイドトレッドと言うだけあって純正時はフェンダーより内側に入ってるホイールを外側に張り出すパーツです。
「ハブ」には「ハブボルト」と呼ばれるホイールを固定するためのボルトが伸びていますが、このボルトにワイドトレッドスペーサーを固定して、ワイドトレッドスペーサーから伸びる「ハブボルト」にホイールを固定します。
簡単に言うと、ハブとホイールの間にワイドトレッドスペーサーを挟み込んだ状態になります。ワイドトレッドスペーサーには10mm.15mm.20mm.25mm〜の厚みがあり、その厚み分ホイールが外側に張り出す事で見た目の雰囲気や走行性能に変化をもたらすパーツです。
類似品としてスペーサーもありますが、こちらは2mm.5mm〜など薄い物が多く、ワイドトレッドスペーサーとの違いはスペーサーにボルトが付いていない事です。
ボルトが付いていない分価格も安いですが、厚みがそこまで無いので張り出しサイズは僅かしか幅がありませんし、車体から伸びるハブボルトの長さによっては、ホイールを装着する際のハブボルトの長さが短くなる事で、ホイール側のナットがしっかり掛からない場合もあり、車種によってはリスクが高まる場合もありますので、取り付けの際は確実に固定できるかを確認しましょう。
ワイドトレッドスペーサー装着の目的
ドレスアップカスタムの場合
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ワイドトレッドスペーサーは見た目を向上させるパーツでもあり、ワイドトレッドスペーサーを取り付ける事でホイールが外側に張り出します。
ドレスアップカスタムユーザーは、フェンダーとホイールの面を同じにする「ツライチ」や、フェンダーよりホイールを張り出す「ハミタイ」などのカスタムも人気が高く、見た目を向上させるための手法としても人気です。
ドレスアップカスタムは見た目の向上に注力したものが多く走行性能を犠牲にする場合もありますし、ホイールのはみ出し具合によっては車検に通らないこともありますので、取り付けの際は注意が必要です。
走行性能を変化させる場合
ワイドトレッドスペーサーは走行性能に変化を与えるパーツでもあります。その効果とはどのようなものでしょうか?
ワイドトレッドと言うだけあり、左右ホイールの幅を広げる事で直進安定性が増します。これは足を閉じて立っている時と、足を広げて立っている時の安定感の違いと同じで、幅が広がった事により踏ん張りが効き安定性が向上するんです。
また、旋回性能にも変化があり、幅が広がる事でコーナー進入時はモッタリしたものになりますが、クリッピングポイントからコーナー出口付近では車体が安定する事で修正舵を入れる回数も減り、立ち上がり重視のセッティングが好みの方にはおすすめです。
セッティングを施す車両によりますが、公道走行メインの方には、ワイドトレッドによる安定・旋回性の変化は、好印象になるも方も多いと思います。
ワイドトレッドスペーサーのメリットとは?
ワイドトレッドスペーサーを取り付ける事によるメリットを紹介したいと思います。
乗り心地の向上
ワイドトレッドスペーサーを装着する事で左右のタイヤ間の距離が伸びます。
これはサスペンションがテコの原理で動いており、左右の幅が伸びた事で少ない力でサスペンションが動くこととなり、路面のギャップに対する追従性が高まります。また車両の重心が下がる事により安定性も向上するのです。
路面追従性が高まるとは路面とタイヤが密着する事を意味しており、タイヤが路面に対してグリップする時間が増えるので、トラクション向上やサスペンションがしっかり動く事による安定性の向上に繋がります。
ロール(車両横揺れ)の減少
ロールとはコーナー進入の横揺れの事です。車の旋回中は遠心力により曲がる方向の外側のタイヤに荷重がかかります。それと同時に曲がる方向の内側のタイヤは外側と比較して荷重が掛かってないので、路面に対する接地力が弱まります。
ワイドトレッドスペーサーを装着するとロールセンターの位置が高くなり、車体の重心に近づく事で横揺れを軽減させるので、曲がる方向の内側のタイヤにも適度な接地力が加わり、安定したコーナーリングが可能になります。
後付けホイールの選択肢が増える
車両によってはホイールを固定するハブボルトが4本や5本の車両が存在します。
ハブボルトが4本しか無い車両にハブボルトが5本必要なホイールを取り付ける事は出来ませんが、ハブから伸びる4本のボルトにハブボルトが5本付いたワイドトレッドスペーサーを装着する事で、5穴あるホイールを装着する事も可能ですので、好みのデザインホイールを装着したいドレスアップユーザーにはおすすめのカスタムです。
見た目の迫力が向上
フェンダーとホイールの面を合わせる事で車体ボリュームが増します。
特に車体前後から見た時に、路面と接地するタイヤが車体の外側に張り出す事で、どっしりとした雰囲気になり迫力が増します。
ワイドトレッドスペーサーのデメリットとは?
ワイドトレッドスペーサーを取り付ける事によるデメリットを紹介したいと思います。
バネ下重量の増加
ワイドトレッドスペーサーはアルミやジュラルミンなど、金属の中でも高剛性で軽量な素材が使われてますが、足元の重量増加は仕方がない事です。
サスペンションより下の重量が増す事は、サスペンションより上の重量が増すよりも走行性能に影響を及ぼします。
この事をバネ下重量の増加と言って、走行性能においてネガティブな材料の一つです。
バネ下重量と聞いてもピンと来ないと思いますが、簡単に説明すると、重いリストバンドを手に巻きつけて移動するよりも、足に巻きつけて移動する方が移動する力やスピード違うことと同じで、足元に重量物を取り付ける事で車の加速や制動に影響があります。
エンジンパワーが大きい車両であれば、体感する影響は大きくないと思いますが、パワーの小さい車両であれば走り出しなどに、かったるさを感じるでしょう。
ハンドリングの悪化
トレッドが広がる事でハンドルからタイヤの位置が離れます。この影響によりハンドル切り始めの反応が鈍くなります。
また、路面の起伏が激しい時は、ハンドルを取られやすくなります。
ホイールの脱落による事故
ワイドトレッドスペーサーは車体から伸びるハブボルトに固定したワイドトレッドスペーサーから伸びるボルトにホイールを固定します。
純正状態であれば、車体から伸びたハブボルトにホイールを固定します。
どちらが剛性強そうですか?明らかに後者が強いですよね。
特にタイヤホイールはエンジンパワーを路面に伝える重要な役目があり、そこに掛かる負荷は大きく、ホイール取り付けはトルクレンチを使って適正トルクで締め上げるなど重要視される整備項目です。
ワイドトレッドスペーサーの厚みが増える程負荷が掛かるので、日常的に増し締めを行い適正管理が必要です。
低品質のワイドトレッドスペーサーの装着や、日常点検を怠ることで、ホイール脱落などの事故が発生したケースもあります。
厚みによっては車検に通らない場合も
ワイドトレッドスペーサーを取り付けた事で、フェンダーよりタイヤホイールがはみ出てしまい、車検に通らない場合もあります。
また、車検基準をクリアしていたとしても、検査官によって認めないケースなどもあるようですので、装着前には行きつけのディーラーや車検店舗などに事前相談する事をお勧めします。
車検時に間違いが無いのは、ワイドトレッドスペーサーを取り外して車検に出すことですね。
理想のツライチを実現するサイズの測り方
ワイドトレッドスペーサーを装着するにあたり厚み選びは悩ましい所ですが、ここからは純正フェンダー面と純正ホイール面の差を調べる方法を紹介します。
まずは5円硬貨を用意します。中心の穴に細い糸を通して、ぶら下げた5円硬貨を重りにして、フェンダーの最も外側に張り出してる面に通した糸をテープなどで固定します。
ぶら下げた5円硬貨の重みにより糸が直線を出しますので、糸とタイヤの最も出ている箇所との長さを測ります。
その差が20mmなら20mmまでのワイドトレッドスペーサーが装着可能となります。この計測方法は簡易的なものですので、保安基準適合が気になる場合は、少し薄いワイドトレッドスペーサーを選ぶ事をおすすめします。
ワイドトレッドスペーサーを選ぶ注意点
ワイドトレッドスペーサーにはメリットもデメリットもありますが、適切な取り付け管理を行えば自分好みのセッティングに近づける事が可能です。
ここからはワイドトレッドスペーサーを選ぶ注意点をまとめてみました。
安い物には注意
ワイドトレッドスペーサーに使われる素材はアルミやジュラルミンなど剛性の高い素材が一般的ですが、粗悪品となると剛性不足により取り付け時にヒビが入る商品もある様です。
安いからと言って安易に手出しはせず、若干値が張っても信頼おけるメーカーの商品をおすすめします。
ハブリング付きが必須
ワイドトレッドスペーサーにはハブリング付きの物、付いてない物と存在しており、ハブリング無しの場合は取り付けセンターが狂う場合があります。
精度の高いものであれば、ハブリング無しでもセンターは出るとの意見もありますが、重要なパーツだからこそ、多少値が張っても安全性を考慮してハブリング付きのワイドトレッドスペーサーを取り付けましょう。
ハブボルトの長さ
ワイドトレッドスペーサーの厚みによっては、純正のハブボルトがスペーサーから飛び出す場合があり、取り付けるホイールの裏側に接触する事があります。
ホイール内側の取り付け面に逃げがない場合は、純正ハブボルトをカットしたり、スペーサーを挟んだりする事もある様ですが、剛性を考えるとおすすめしないやり方です。
購入前にはホイール内側にボルトの逃げが有るのか?ワイドトレッドスペーサーを装着する事で、純正ハブボルトが飛び出してこないかを確認してください。
人気のワイドトレッドスペーサーメーカー
ユーザー評価の高いワイドトレッドスペーサーメーカーを紹介します。
KSPエンジニアリング
東京武蔵村山市に本社を構えるKSPエンジニアリングは、ジュラルミン素材を使用したワイドトレッドスペーサーを製造する。また、ワイドトレッドスペーサーは保安基準に適合しており、品質に於いても信頼できる日本メーカー。
協栄産業
協永産業は高度な鍛造ナット技術を持ち、JIS認定工場に指定されています。この技術を用いて高剛性のワイドトレッドスペーサーを製造しています。
特に品質管理には力を入れており、2002年にISO品質マネージメントシステムを取得している日本メーカーです。
佐藤精機
機械加工技術に優れた部品メーカーである佐藤精機は昭和22年に群馬県高崎市で誕生した歴史のあるメーカーです。
佐藤精機のワイドトレッドスペーサーはジュラルミンを採用しており、センターハブ付きの取り付け精度の高いワイドトレッドスペーサーを開発している日本メーカーです。
ワイドトレッドスペーサーを取り付けてみた
管理人の愛車はシビックタイプR FK2型。純正のスタイリングがお気に入りですが、ホイールが引っ込んでいる事と、ハイスピード時の安定性に不満を感じていました。
軽量アルミホイールも検討しましたが、好みのデザインがなく、それならばワイドトレッドスペーサーを利用して、スタイリングと安定性を実現したいとの思いから、ワイドトレッドスペーサー装着を実行しました。
装着したのは、オーストラリアのmodeautoconcepts社のジュラルミン製ワイドトレッドスペーサー。
シビックタイプR FK2型は、ヨーロッパ規格の純正パーツを多用しており、国内メーカーでの取り扱いがなかった事からこの商品を選びました。
ブラックアルマイト加工が施されており、装着時の見た目がお気に入り。もちろんハブリング付きだから、ホイールセンターもしっかりでます。
今回は前後20mmを取り付け。車体側のハブボルトがスペーサーから若干はみ出てますが、純正ホイールの裏側にはボルトの逃げがあるため、問題なく取り付ける事が可能です。
このボルトが長すぎると、ボルトをカットしたり、最悪ホイールが取り付けできない場合もありますので、事前に取り付け可能かチェックする事をおすすめします。
ホイール装着後は、ワイドトレッドスペーサー取り付け前と比較しても迫力のある佇まいに変化。
愛車は25mmまでなら許容クリアランスでしたが、念の為車検対応を確実な物にする事と、広げすぎによる大幅な乗り味の変化を懸念して20mmを取り付けました。
完璧なツライチとまではいきませんが、純正の雰囲気と攻撃的な雰囲気がうまくミックスされており満足できる仕上がりでした。
ワイドトレッドスペーサーの走行評価レビュー
車は見た目も大切ですが、それよりも走行性能やフィーリングが自分に合う事が大事だと思ってます。
愛車のシビックタイプR FK2型には、スイッチ一つでエンジン特性や足回りの減衰力を変化させる、公道走行寄りのノーマルモード、サーキット走行寄りの+Rモードと2種類の特性を選べる機能がついてますが、公道走行がメインの管理人には、ノーマルモードも+Rモードも乗り心地が硬く感じており、また、ECU交換によりエンジンパワーが上がったことで、乗り心地が純正と比較してハードに感じていました。
この様な理由からワイドトレッドスペーサー装着に至る訳ですが、結果として装着したことは正解でした。
乗り心地 評価レビュー
乗り心地は想像以上に良くなったと感じています。市街地などはノーマルモードで走行しますが、路面によっては波打つ形状であっても、サスペンションストロークがしっかり効くので、左右への振れが和らいだ感覚です。
また、ワインディングの場面では、+Rモードで走行する事が多いですか、スピードが速い時の路面ギャップに対するサスペンションの収まりが、0.5ストローク早めに収まる感覚があり、ギャップを超える時の車体の無駄な挙動が減った様に感じます。
旋回性能 評価レビュー
旋回性能は、ハンドルの切り始めの重さが増した事で軽快さが少なくなりました。特に交差点の左折時など装着前よりも力を入れてハンドルを切る印象です。
切り始めの旋回性能は犠牲になりましたが、旋回終了にかけての安定性は増しており修正舵を当てる回数が減りました。
高速コーナーなどはアクセルオフで、インに鋭く切り込む挙動はそのままですが、アクセルオンによるアンダーステア傾向が弱まり、ニュートラルなコーナーが楽しめる様になりました。
加速性能 評価レビュー
少し出だしが悪くなりました。これはバネ下重量が増した事による影響ですね。
メイン走行がサーキットであれば問題ですが、公道走行がメインの管理人にとっては、多少の出だしの悪さによる悪影響は全く感じません。
ハイパワーFF車だから元々の出だしの加速は良くないです。しかしグリップが効いた中間加速においてはワイドトレッドスペーサーの重量を感じさせる事なく鋭い加速を見せてくれます。高速道路での追い越し加速においても、反応が悪くなったとは全く感じませんでした。
ブレーキ性能 評価レビュー
ブレーキ性能については正直わかりませんでした。その理由はほぼ同時期にブレーキパッド・ディスクの整備を実施した事により、制動力が復活したからです。
敢えて言うなら、止まる直前の挙動において、車体重心の前荷重移動が僅かに感じる?程度です。
ワイトレよりワンランク上の楽しみはホイール交換
ワイトレは手軽にトレッド幅を広げることができ、走行性能や見た目に変化をもたらしてくれます。
実際に管理人もワイトレを装着して走行性と見た目を自分好みにカスタムしました。その理由として、純正ホイールのデザインが好みだったからです。
例えばアフターパーツメーカーから、好みのホイールが販売されていたら、そちらを装着したと思います。
なぜなら、ワイトレを1枚挟んでホイールを装着するよりも取り付け剛性が間違いなく高いからです。
アフターパーツメーカーのホイールは、ハブボルトの取り付け位置がオフセットされており、車体とホイールをツライチにすることも可能だからです。
管理人のように純正ホイールにこだわりが無いのであれば、アフターパーツメーカーのホイール装着をおすすめします。
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